パンデミックが続く中、バンクーバーのアート業界が力を入れている分野がARアートです。ARとは拡張現実のことで、スマートフォンなどを通して実際に3Dで実際にそこにあるかのように現実に表示させる技術のことです。バンクーバーはこれを活用しストリートアートのように、作品を市内に数々用意することで、密室を避け散歩をしながらアートも楽しもうという取り組みをしています。
具体的な取り組みとしてVancouver Mural Festival(VMF)というものがあります。市内に昨年から新たに60箇所以上アートを設置し、そこについてるQRコードを読み取ることでスマホを通して3Dとなった拡張現実を楽しめる仕組みになっています。
VMFはミューラルアートはただの目立ったアートではなく、そのコミュニティや文化を反映し、そこに暮らす私達がどうその地域を認識するかということに強く影響すると考えています。その為アートにより街を鮮やかにできると同時に、その地域が持つ社会問題を問い掛けより良いコミュニティを作るきっかけにもなるという取り組みです。
具体的には、
・次の世代のアーティストによる作品
・社会問題をモチーフにした作品
・バンクーバー原住民アーティストによる作品
・初めて壁画アートをするアーティストの作品
といったカテゴリー分けができます。
特に若い世代と地元バンクーバー出身・拠点のアーティストに作品を作る機会を生み出すことが大きな目的となっています。
ホームページはこちら→https://vanmuralfest.ca/
多様な文化とアートを深く考える社会の設立を目的としており、色々な人種が共存するバンクーバーらしい活動をしています。
イベントのスタート地点 Canada Place
ダウンタウンにある観光名所カナダプレイス周辺に、期間限定で二つ展示されていました。
一つ目はSaida Saetgarさんという方の「JOURNEY INTO DREAMLAND」という作品です。
作品のコンセプトは”パンデミックが続き悪夢のような世界が広がっていく中、私たちはポジティブなビジョンや希望が大切です。この作品を通じて、深呼吸をし日々の負担を軽減してみてください。自分自身が神秘的な空へ浮いているような、美しい理想郷へと誘われるような光景を想像して見てください”といったメッセージが込められているそうです。実際に体験してみると写真のように、絵では見えない筈の裏側まで見ることができます。スマホを動かして見ると、それに合わせて見たい角度になり本来見えないところまで楽しむことができます。
もう一つはkenxxxoooさんというまさかの日本のアーティストの作品です。ARを使ったアートディレクターやビデオエディターをされているそうです。小さく表示されているインスタグラムのアカウント(@kenxxxooo)をのぞいて見るとかなりポップで先進的なアート作品がいっぱい見られました。こちらの作品がBRAINWASH(洗脳)と名付けられている背景が見えた気がします。こちらの作品は画面から飛び出してくるように、色々な音やポップなパーツ・カラフルな世界が自分の周りに広がっていくような感じでアートを3Dで体験できます。写真では撮りきれないくらい周りに広がる世界観だったので実際の写真はありませんが、kenxxxoooさんのインスタグラムでその世界観を堪能できます。お時間がある方はぜひそちらで。
科学から歴史、アートまでなんでもカバーする Main Street-Science World Station
あの有名なサイエンスワールドの最寄駅周辺には、(3Dにはなりませんが)このようなダイナミックな作品がずらりと。
この絵はスイスのNevercrewさんの作品。赤いペットボトルにホッキョクグマがはまってしまっている様子は、資源枯渇問題による温暖化と環境汚染を訴えかけているメッセージ性が込められているそうです。
二つ目はここカナダ・ブリティッシュコロンビアのCody Lecoyさんというアーティストの作品。こちらは私達人間が自然界で自分の身を守る本能を題材としており、化石燃料枯渇が私たち人間や自然界に及ぼす影響を描いているそうです。
サイエンスワールド周辺最後はこちらの仏教のマーラとヤマをモチーフにしたPaige Bowmanさんの作品です。こちらのアートは複数の神話と文化を元に、死と願望がコンセプトのようです。この絵をデジタルでスケッチしたものをこの壁に映し出し、実際に描いたとのことです。
観光名所Granville Islandへ続くGranville Street
グランビルアイランドへ行ったことがある方は一度は目にしたことがあるであろうindigo(ブックストア)が位置するグランビルストリートにも多くの作品があります。
10th Avenueからリッチモンドへと通じている70th Avenueまで点々とアートがあります。ここにある写真はほんの一部ですが、アート好きの方にとっては10番バス一本で半日は楽しめる程、多くのミューラルアートがあります。
こちらのSean Jantziさんの「Summer In The Garden」はバンクーバーの季節感を表現した作品です。11月頃から4月にかけ半年は雨が降り続くバンクーバーで、やっと訪れた燦々とした陽の光を満喫している様子を描いています。
Mega McGrathさんによって描かれたこちらの「What Matters Most」にはCharles Bukowskiさんの詩が引用されています。
“What matters most is how well you walk through the fire”
2020年のコロナによるみんなにとって大変な年をどうにか乗り越えてほしいというメッセージを込め、こちらの詩を引用したそうです。
TAFUIさんによるこちらの「Diaspora Diary」は、Zebra Clubという名のアパレルショップにちなんでゼブラ柄のペイントがされているのではなく、こちらも市の取り組みの一環としてのアートです。
“We are one”と”人々がコミュニティーとして一つになったバンクーバーの歴史を理解し共有すること”がコンセプトの作品。mark-makingという手法を使用しています。作者は自分のストーリーと共有することで人々と自らを繋げることができると考え、それぞれの模様はそれぞれ私達人間を表し、遠くから見ると私たちは同じであるというメッセージが込められています。
聖書の有名な一説にある”Love your neighbours”に”All”をつけることで、その本来の意味を強調しています。
周りの特定の誰かを愛するのではなく、誰でも関係なく周りの人々であれ何であれ愛しましょうというのが本来の解釈です。
その心をいつでも思い出せるよう願いを込めた作品です。
最後に
このようにバンクーバー市内至る所にアートが新たに展示されました。多くの会社は在宅勤務、大学は2021年9月まではオンライン授業が決まっている中、市民が少しでも外で安全に息抜きできる機会を作ろうとしているように思いました。
ちなみにバンクーバーの人たちは意外にみんなマスクも消毒も距離も徹底しています。手袋着用で買い物、N95や防塵マスク着用も多数おり、近くを通りたくなかったら伝えればみんな理解して譲ってくれます。
こういった状況の中、散歩がてら新しくできたアートを外で楽しむというのは、みんなが得する取り組みだなと感じました。